土俵際競馬愛好会

相撲と競馬と銭湯と映画を愛する男の隠れ家的日記

東京優駿(日本ダービー)2021を振り返って

1着 シャフリヤール 鞍上 福永祐一

2着エフフォーリア 鞍上 横山武史 着差:ハナ

 

 

エフフォーリアと横山武史。

騎手は今回勝てば田島良保の最年少ダービー勝利記録が実に半世紀ぶりに塗り替わっていた。

今年のダービーで私が見ようとした物語は、彼が切り拓く新たな時代の幕開けであり、それを阻もうとする壁であり、それを乗り越えていく横山武史だった。

 

sumo-to-keiba.hatenadiary.jp

 

 

 

しかし現実はどうだったか。

スローモーションに映ったのは、わずかハナ差、それも首の上げ下げのタイミングで勝利を逸した武史の姿であり、壁として立ちはだかり、まだ越えさせないと言わんばかりに差しきった祐一の姿だった。

 

 

エフフォーリアの血統を見てみると、父エピファネイアは2013年ダービー2着

父父シンボリクリスエスは2002年日本ダービー2着、母父のハーツクライも2004年のダービーで2着しているように、言うなれば悔しさを知る血統であったわけだが、これも競馬か、エフフォーリアもまたダービーで2着。エフフォーリアは血を超越することは叶わなかった。

跨る武史にとっても悔しさの残る結果になってしまったに違いない。

 

 

競馬がおもしろいなと思えるのは、やはりこのエフフォーリアの父がエピファネイアであること、そしてそのエピファネイアの鞍上が他ならぬ福永祐一だったことだろう。

 

ー先頭に立った刹那、外から抜き去っていく豊、遠い半馬身……

武豊キズナが制した、あの2013年のダービーから8年。

祐一はこの8年の間にダービーを勝ち、ダービーの勝ち方を知った。

そして今度は自らが、あの時立ちふさがっていた壁になった。

そして今日、レースの厳しさを、ダービーという壁の高さを、重みを、残酷なまでのハナ差で示して見せた。

ワグネリアンでのダービー制覇で大きな自信をもらいましたし、経験をその後の騎手人生に生かせています。こうしてその後のダービーを2勝できたのも、ワグネリアンでの勝利があったからこそだと思います。

今年のダービー後の祐一のコメントが、ダービーを獲る前と後とで見えるもの、できることが大きく違うことを物語っている。

 

 

 

では今回勝利を得られなかった武史がそこまでの騎手だったのか?というと、もちろんそんなことはない。

 

祐一の初めてのダービー挑戦は2番人気のキングヘイローでの大敗、そこから初の入着(2着)を果たすアサクサキングスまで実に9年・6回の挑戦をしたことを思えば、横山武史という騎手は2回目の挑戦でしかも圧倒的1番人気を背負ってのハナ差2着だったのだから、運もさることながら実力においても優れた騎手であると言えるだろう。

特に若くして大舞台で臆さない精神力は特筆すべきものだろうと思う。臆さないのではなく、そういったところを見せないだけなのかもしれないが、いずれにせよすごいことだ。

レースを振り返っても、武史は100点の騎乗をしていた。たらればは無限にあるだろうが、最適解の一つを通っていたことは疑いようがない。

 

武史が”そこ”に至るには、まだ早すぎたということなのだろうか。

答えは私なぞにはもちろん分かる訳もない。

ただ、この先もずっと、血は繋がっていき、歴史は回っていく。

そしてそこには、競馬の神様がいるのではないかと思わされるようなドラマがある。

ここまでの人気馬でダービーに乗れるのはそうあることではない。

次にチャンスが巡ってくるのがいつになるのかさえ見当がつかない。

ただ今日のダービーを見て、横山武史という騎手は、「競馬」の流れ、ドラマの中に在る人なんだろうと、私はそう感じた。

祐一が豊に僅差で敗れ、今度はその祐一が武史を僅差で下したように、いつの日か武史が誰かの挑戦を迎え撃つ壁になっていくだろうと思う。

私は彼と同い年だが、次にダービーで彼と彼の馬に◎を打つ時、私たちはいったい何歳になっているだろう。

近い将来であるならそれはそれでいいが、焦らず、じっくりとその力を蓄えてもらって、素晴らしいドラマを見せてくれる日を気長に待ちたいと思う。

 

毎年ダービーは素晴らしいレースではあるのだが、この2021年のダービーは、私にとって特別なダービーになったし、競馬ファンでよかったと思えた素晴らしい一日だった。

 

来年もまた無事にダービーを迎えられますように……