土俵際競馬愛好会

相撲と競馬と銭湯と映画を愛する男の隠れ家的日記

クリストフのファンになっちゃったぜ

微ネタバレあり。 謎語り多し。翻訳についても少々なアナ雪回顧。

まだ一回しか観ておらず、少し経ってから書いてしまったのでなんか的外れなこと言ってるかも。また観るのでその際に加筆修正やら稿を改めるなどする。とりま日記的に記す。

 

大ヒットを記録した前作『アナと雪の女王』の続編として満を持して公開された今作。あらすじは他に多くあるであろうレビュー記事に譲ることとして、私は私の思ったことを綴っていく。
世間では多く期待の声が上がる今作であったが、私は世間ほどこの作品を楽しみにしていなかった。
というのも、前作があまりにもヒットしてしまったものだから、前作と同等かそれ以上の作品がみられるのかという不安と、ヒット作の次って大体コケるしな、という諦念に近いものがあったからである。

しかしこれは全くの杞憂であった。

ミュージカルとしての出来も個人的に申し分なく、シリーズ2作目としてなすべきことはやっているように感じられた。 以下では私が思ったことをつらつらと述べていく。できるだけしないよう気を配りはしたが、ネタバレがあるので、そういうのが本当に気になる方は拙稿をお読みいただくのは遠慮いただいた方がよい。

 

 

 

 

 

 

見える隠し味(クリストフを語るパート)


ディズニーだから当然ではないか!とお叱りを受けそうだが、キャラの深め方が非常に良かったということを特筆すべき点として挙げねばならない。
前作のアナ雪自体、ひとつの完結したお話であったし、当初からシリーズ化される予定で作られたものでもないだろうからキャラの掘り下げというのは第2作を作る上で一つ課題としてあったであろう。しかしそこはさすがディズニー、見事以外の言葉が見つからない。中でも私が一番気に入ったクリストフについてここで取り上げる。
クリストフは主人公:アナのボーイフレンド。トナカイのスヴェンを従え、今回の旅路にも同行する。前作で朗らかな人間として描かれていたが、今作においてもオラフと並んでお話の和ませ役、ムードメーカーとして一役買っている。私が今回非常に感銘を受けたのは彼のソロ曲『Lost in the Wood』の演出である。


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お聞きになればわかる通り、「ガチのバラード」である。シカゴを彷彿とさせるようなサウンド、気持ちのすれ違う切なさを歌っている。音楽だけを聴くとかなりシリアスな感じを受ける。
ところがどっこい、この曲は劇中では

「割とネタ枠」で扱われた。

繰り返す。「割とネタ枠」である。
私が観た回ではオラフのジョークと同じくらい笑いが起きていた。しかしこれにこそ演出の妙ここに極まれり、というべき技巧が見られたと私は感じた。技能賞をあげたい。
この歌詞にこの旋律である。やろうと思えばどこまでも悲しく切なくお涙頂戴モノにできる。しかしそれをしなかったのは、それがクリストフの役割ではなかったからだろう。
クリストフは観客を笑顔にするキャラクターにしたい、という意図があったのではないかと思う。どこか頼りないけれど憎めないヤツであらしめ続けようとしたのだと思う。まじめにやっているんだけどどこか面白い人、私たちの周りにも一人か二人いると思うのだが、その人って大体愛されていると思う(主観です)
前作に比べてソロ曲まで加わって大幅に出番が増えたクリストフ(私的比較)だが、上記のような手法を使ったことによって、「アナのボーイフレンド」から「アナのボーイフレンドの『憎めないヤツ』」に深まったのではないかと思うのだ。まぁ元々憎めないヤツだったけど、より一層ってことね。

この一曲のおかげでクリストフの気持ちがよりクリアになるのはもちろんのこと、このステップを経た事でラストのハッピーエンドでもクリストフにより感情移入しやすくなる。

つまるところ、『Lost in the woods』はクリストフのキャラを引き立てるべくアナ雪2に入れられた、「見える隠し味」と呼ぶべきものなのだ!!!!!!と思う。
「キャラを深める・立てる」こう文字にすると簡単そうに思われがちだが、人物をより掘り下げるというのは物語での位置づけなどを計算しながら行うものであるから、字面以上に難しい。
しかしそれをいとも簡単に、しかもこの上ない形でやってのけるのがディズニーであり、それこそが愛されるキャラクターを生み続けるディズニーの偉大さの源泉であるということを再確認させられる。

 

テーマとそのちりばめ方(曖昧なパート)


子供向けでありながら考えさせられるテーマを持っている、というのは優れたアニメーションの一つの条件だと個人的には思っている。

ディズニー然り、ジブリ然り、つい見てしまうアニメ、時が経って見返してしまうアニメにはどこかそういった要素がちりばめられている。
今回のアナ雪、見る人によってテーマと捉えるものというか、感じるもの、目がいくものがずれてくるだろうなという感じを受けた。
ある人はクリストフのような恋愛感情に、ある人はアナのように悲しみから這い上がる強さに、ある人はオラフの言う「水の記憶」に、またある人はエルサの立ち向かう強さに、それぞれ共感し、何かを得ることだろう。
ところで私は仮に作った人が何か「テーマ」と呼ぶべきものをもって作品をつくっていたとしても、受け手は必ずしもそれを意識して享受しなければならないとは思わない。受け取り方に貴賤も正誤もなく、その受け取った人が感じたことこそが正解なのだと思っている。
今回のアナ雪では、上述したように観た人の心に少し引っかかって、考えさせられてしまうような言葉やシーンが、ほかの作品に比べて多くちりばめられているように感じた。これは決して焦点がボケているとかではなくて、それだけのメッセージの種が埋まっているということだ。それも、「ほら、考えるポイントだぞ!」というような傲慢な主張をしてくる類のものではなく、そっとそこに置かれているのだ。
歌の中で歌われるものもあれば、たとえばオラフがぽろっといったようなものもある。そのどれもがその存在を主張することはなく、ただ純粋に観ている人々によって見つけられるのを待っている。

そしてこの種の多さこそが人をこの作品に目を向けさせるものであり、時が経った後、作品に帰ってこさせるものであると思う。
なんと素敵なことだろうか、と私は感動する。ただ見せるでもなく、かといって押し付けてくるでもない。この絶妙な距離感こそが、私の「ディズニー好き!!!」の根底にあるものであり、その源泉であると確信している。

何言ってんだこいつと思うかもしれない。私も何言ってんだろうな、となっているのでそれは至って自然である。しかし殊に気にすること勿かれ、これは私のブログである。

あとこの項、めちゃ曖昧な事しか言ってませんが、私がまだ具体化に至るまで、文字にできる自信を持てるまでこの作品を理解していないから、ある種意図的にフワフワさせています。

何回か観たらまた書きます。

 

 

 

ちょっと気に入らなかったこと(イチャモンつけるパート)

以下気に入らなかったところを記す。

かなり個人的な嗜好による部分が大きいので、そんな刺々しい眼差しを向けないでください。

 

 

ちょっと気に入らなかったこと①:終盤の軽さ


あんまり称揚し続けても仕方ないから、少し批判というか不満点を記す。
まず一つ目は終盤の軽さ。
エルサが凍ってしまい、過去の過ちを正すべく奮闘するアナ……というのはめちゃめちゃ熱い展開だったし良かったのだが、割とそのシーンが簡単に終わってしまい、あっさりエルサが解凍(この表現正しいのかわからないが)され、ハッピーエンド!みたいな流れに持ってかれたのには少し冷めた。
アナが『The Next Right』で悲壮を歌い上げて、いざ最終決戦!という盛り上がりだったのにふたを開けたら……という感じはあった。しかしながらこれはかなり個人差があることなのは間違いないので、あくまで私の意見という認識を忘れないようお願いしたい。
終盤といえば、水の精を従えた流れも突き詰めると意味わからなかったと思うんですがいかがでしょう?私が一回しか見ていないから分からないだけ説がある、というか濃厚なので深くは触れないでおく。

ここまで書いておいてだがラストは感動的だったし、エンドロール後のミニシーンもクスッとしてしまうものだったので、鑑賞後は非常に満足で幸せな心地だった。要するに終わりがよければすべて良いのである。なら書くな?まぁそう仰らずに……ここは私のブログなのですから。

どうでもいいですけど、波に揉まれてるとこ、モアナ感ありましたよね。ありませんでしたか?ありませんか。そうですか。

 

ちょっと気に入らなかったこと②:曲の邦題


好みの問題はありそうだが、何を隠そう私は翻訳にうるさい(特に英→日)
今回訳詞はディズニーお馴染みの高橋知伽江先生だ。彼女の「ありのままの」の訳詞は国民的大ブームを巻き起こしたのは記憶に新しい。
しかし個人的にあれはまぐれ当たりの類だと考えていて、ほかの訳はあまり好きでなかったりする。モアナの時もそうだった。『How Far I'll Go』の訳だけはよかったが他はもっと改善の余地があったと思っている。
音ハメはもちろん原曲の耳触りや質感を損なわないために大事なのだが、翻訳=多言語にアダプトさせる以上最も大切なのは受容しやすいこと、理解しやすいことであるという立場に私は立っている。
アツくなりすぎた。本題に戻そう。
邦題の件であるが、今回取り上げるのは『Into the Unknown』と、またしても『Lost in the Wood』である。

いやぁこの2作の邦題はちょっと仕事が雑ではないですかねぇ、とため息が出てしまう。
前者の邦題はその名も『イントゥ・ジ・アンノウン~心のままに~』である。
味をしめすぎでは……さすがに雑。訳詞自体はさすがプロ!というデキなのに勿体ないの一言である。
未知の旅へ!と歌っているのになぜ『未知の旅へ』にしなかったのか。プロならではの理由があるのだろうか。少なくとも今回は前回の成功に気をよくしたとしか思っていないしそう思われても仕方のない題だと思う。余談だが、「未知の旅へ」も音数的にどうなの?と思っていたが聞いてみたら普通に「すげぇ、ハマっている」となった。名訳とまではいかないまでも、良訳ではあると思う。


さて後者『Lost in the Wood』であるが、これはマジで題で損してしまっていると思う。
邦題はその名も『恋の迷い子』である。ひどい。
正直、こっちこそ英題をカタカナにしてよかったのではないかと思っている。
もしかすると作中での演出みて題を決めたんじゃ……と変な勘繰りをしてしまう。
先の章で紹介したが、この曲のシーンではコメディチックに見せるため、意図的に少し昔な、「クサイ」感じに演出されている。作中の流れから言ってこれは意図的であると考えてよいと思う。
このクサさ、昔さに合わせて「昔っぽい題にするか」ということで件の邦題にたどり着いたのではないか、というのが自論である。
当然題までダサくする必要のある曲ではないし、むしろ題はまともで良い曲なのにあんな使われ方、という方が効果的でさえある。訳詞についてはまぁこんな感じだよね、という風に収まっているだけに勿体ない。
高橋先生は個人的に、突っ込みどころは多いけどたまにすげぇのを作ってくる先生というイメージなので、今回についても「あ、またね、そういう感じね」と流せるのだが、アナ雪2はいかんせん批判すべきところがなかなかないのでこうやって重箱の隅をつついた。
しかし私と同じような考えを持っている人は必ずいると信じている。

 

最後に


ここまでいろいろ書いてきたが、まとめると「総じていい映画!観て!!!」である。
もしこんな冗長な駄文をここまで読んでくれた人でアナ雪2をまだ観ていない方がいるのであれば、ぜひとも読み切ったご褒美に映画館へ足を運んでいただければ。