土俵際競馬愛好会

相撲と競馬と銭湯と映画を愛する男の隠れ家的日記

肛門周囲膿瘍って知ってますか?〜長男でも耐えられない〜

鬼舞辻無惨でも苦しむであろう肛門周囲膿瘍闘病記

 

 

前の投稿で少し触れたが、

肛門周囲膿瘍」という病気になった。

 

 

sumo-to-keiba.hatenadiary.jp

 

 

肛門には肛門陰窩という小さな窪みがあって、本来ならそこに便が引っかかるようなことはないのだが、例えば下痢などをした時に菌を含んだ便がそこに付着してしまうことがある。

そうすると肛門陰窩は炎症を起こし、膿を出す。その膿が肛門陰窩から内へと進路を求めていき、トンネルを作ると同時に膿だまりを形成する。それにより腫れや痛みを伴うが、その状態を肛門周囲膿瘍と呼ぶ。

例えるなら地学で触れた人も多いであろうマグマみたいな感じ。地底から噴き出してくるマグマが膿だと考えれば分かりやすい。

 

肛門周囲膿瘍は痔とは異なるので、ボラギノールのような薬では対処できず、専門家医の診察のもと処置が必要である。

 

軽症ならば抗生物質の投薬により化膿を止め、炎症の鎮静を待つ場合もあるそうだが、大抵の場合は切開による排膿となる。

 

ちなみに、肛門内部の患部から膿だまりが進行し皮膚を超えて表面貫通したものを痔ろう(穴痔)と呼ぶ。痔ろうは基本的に手術によってしか根治しない。

切開による排膿は、表面に膿の出口を作る事により化膿による炎症を抑え痛みをなくしていく処置であるから、当然に痔ろうへと進行していく可能性は高い。一説には7割ほどが肛門周囲膿瘍から痔ろうになっている。繰り返しになるが、痔ろうになった場合は肛門周囲膿瘍の切開とはまた別に、痔ろうの根治手術を受ける必要がある。さもなくば痔ろうは化膿して膿を垂れ流し、あるいはまた新しい肛門周囲膿瘍を作り再び苦痛を引き起こす。その繰り返しによって痔ろうはありの巣の如く複雑化する。

複雑なほど手術は難しくなり、最悪の場合肛門括約筋の損傷による人工肛門装着や、長期的に見た場合に発癌の元となる(痔ろう癌)リスクを抱える。

 

 

 

今回の私は割と原因が分かりやすかった。

旅行初日、長旅と長距離歩行による疲労が溜まる中でバカ食いして即日下した。

2日目には蚊に刺された程度の違和感があり、3日目(最終日)にはかなりの違和感を伴い、帰りの新幹線では強い痛みを伴った。

今考えるとおよそ5時間も座り続けていたのはこの肛門周囲膿瘍のことを考えると絶対に良くなかったと思う。

 

そして発症から4日目の10月31日。

流石にこの痛み方はまずいと思い、土曜診療をしている肛門科(I 肛門科とする)を受診した。

 

肛門科に来るのはもちろん初めてで、どんな具合なのかもちろんよく分かってはいない。

 

まず驚いたのは異常に長い待ち時間。

診察前2.5時間、診察から採血等に至りそれが終わるまでが1時間、全部終わってから会計で呼ばれるまでに0.5時間の計4時間もかかった。

土曜だから、というのもあるのだろう。

しかしそれにしても大変長い待ち時間だった。

 

土曜の時点での肛門患部の腫れはゴルフボールより少し小さいくらいか、あるいは少し大きめのスーパーボールくらい。しこりとして認識でき、かなりの熱感と痛みとを伴った。

 

自分なりに肛門の病気を事前に調べていて、大体見当はついていたのだが、その見当通り、肛門周囲膿瘍と診断された。

私の進行具合的に、そして他の医院が出している病状とその処置の解説を鑑みるに、おそらく切開されるだろうな〜という予感がしていた。

 

しかしながらその予感は当たらず、抗生物質と頓服薬の処方のみ。しかも1週間後に来院とのこと。痛めば来い、という意味で頓服薬は3回分しか出されていなかったが、それにしても頓服薬3回分って少なすぎないか????1週間って7日間もあるんだが??という感じだし、素人の私でも抗生物質は化膿こそ止まるだろうが患部の治癒に直接的に作用はしないことは知っていた。

というのも、私は親指の陥入爪とそれに伴う化膿で何度も何度も切開や爪の引き剥がし措置を受けてきたが、すでに一定以上に化膿している状態での抗生物質投与が痛みの緩和に効果をほぼ持たないことは経験として知っていたという経緯がある。

 

私はその処置に、素人ながら恐縮だが非常に懐疑的だった。

爪は確かに自然に膿疱が破裂して排膿される確率が高い。足指周りの皮膚は薄いことも多く、力の入る部位ゆえに貫いて破裂、排膿という流れも少なくないからだ。

しかし一転、肛門はどうだろう。私の患部をスマホで撮ってみたりしたが、膿と認識できるものが表皮のすぐそこまで来ているという事もなく、皮も肉と相まって分厚く見える。これが自然に破裂するとかあるのだろうか?

 

土曜日、診察を終えた後の私はそのままの足でバイトへ直行した。

ずっと座って行うバイトだったこともあり、意識が飛びそうになっていた。もはや痛いと叫ぶのを我慢する方に気を取られて、なかなか進みが悪かったのを覚えているし、バイト先の社員さんに何か話しかけられてもいつも以上にうまく返せなった。帰りの電車も、疲れているから座って寝たい気持ちだったが座ると激痛なので立って帰る羽目になったし、この時少し熱感があった(測ったところ37.2度あった)

 

そして何とか帰宅したわけだが、この日の夜からが本当の地獄の始まりだった。

 

 

まずベッドに体を横たえることができなかった。

尻というのは思った以上に触れてしまうもので、どのような姿勢をとっても必ずと言っていいほど痛んだ。

そしてだんだんと病状が進んでいたのか、何もしなくてもある程度痛くなっていた。

眠りにつこうとしても眠れないし、かろうじて意識がとんでも無意識下での寝返り的な動きで激痛が走り意識が戻る。

最早平穏など無い。

私の場合は下関と博多を回って幸せの絶頂とも言える状態で帰ってきてから一転してのこの状態だったので、本当に気を病んでしまった。

線路に飛び込めば……とかも割と真剣に考えたりした。今思えばおかしな話だが、人間として当然に取れる行動(取れていた行動)を1日のうちに奪われて、私は脆くも心を打ち砕かれてしまったのだ。

 

 

 

そして30分と寝れなかった日曜朝。

痛い。

常にケッキングみたいな姿勢

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でいるものの、それでもなお痛いし、ましてや仰向けになどなれない。

一番苦しいのは飯を食べる姿勢を作れないこと。立っても上半身を支えるために肛門まわりが機能してしまって痛むし、ベッドの上で食事姿勢も取れない。ケツを上に向け、運動会でやるピラミッドの下の段の人の姿勢だと少し楽だったが、箸を持つと片手で体重を支えねばならず、これは10分ともたなかった。

そして痛みが激しさを増してきたせいか、食欲も無くなってきた。体が弱ってしまうから食べなくてはならないのだが、食べようにも姿勢は取れず、そもそもの食欲も痛み(とおそらく熱)によって削がれる。

下関最終日(金曜)の私の体重は63キロだったのだが、日曜なんとか乗った体重計が示したのは61キロ。2日で2キロも落としてしまった。

 

日曜は競馬をして気を紛らわしていたがそれも効果はないし、痛みは増す一方。

アーモンドアイは肛門無事なんだろうな、無事是名馬だよな、とかよくわからんことまで考えてた記憶がある。

 

日曜の夜は地獄だった。流石に腹は減ってきたが遂に良くわからん姿勢から動けなくなった。

動くだけで患部が痛むし、なんならくしゃみや咳、鼻をかむことでさえ響き、痛む。

何をするにしても痛みを伴うものだから非常に苦しいのは想像していただけることと思う。

常にものすごい力で針を刺されているような、とも言えるし、熱いものを押し当てられているとも言えるかもしれない。いずれにせよ激しい痛みだった。

 

この日の晩も当然眠れない。

検索履歴が肛門周囲膿瘍で埋まった。

検索の中でいくつかブログを拝見したのだが、排膿の切開はめちゃくちゃ痛い、この世で一番痛いとか色々書いてあった。痔ろうの手術よりも痛いと書いている人もいて、めちゃめちゃ怖くなったのをよく覚えている。

 

しかしながら、私がその時抱えていた痛みもまた、限界に来ていた。発狂寸前だったと思うし、母には目がおかしいと言われた。

私は相撲もやっていたし、打たれ強くは無いにしても決して弱い方でも無いと自負していたが、今度からそう言うのはやめようと思った。

 

痛みにより眠れない中で、必死に肛門科を探した。私が最初にかかったI肛門科は、基本投薬でなんとかしようするスタンスらしく、そうなるとまた訪れても薬を飲み切れ!の一点張りで通されるかもしれないとさえ思ったからだ。

あと、かかった医師が非常に高圧的で、早口で捲し立てるようにこちらに物言ってくるし、看護士さん達をアゴで使うし、決めつけが強かった(例えば普段の便は?と聞かれて、至って健康的な、いわゆるバナナってやつですねと答えると、そんなわけないでしょこんなになってるんだから、軟便に決まってる、といった具合に)

し、何よりこんな人間に切られたく無いと思ってしまったからだ。

幾度となく足の方の手術は受けてきたが、その施術は(患者ごときの分際で何を、と思われるかもしれないが)信用できるお医者様にやって頂いていた。メスを入れられるというのは大変な恐怖であるからこそ、信頼に足る人物にこそ執刀して頂きたいと思っている。

 

ともかく、I肛門科から逃れるべく、いわゆるセカンドオピニオン的に別の病院を探した。

すると、2020年10月にオープンしたという、2つ隣の駅近くにあるクリニック(MMクリニックとする)を見つけた。

内科がメインらしいが、先生の1人は肛門科もやっていて、検索すると上位に出るような有名な肛門系(?)の病院の勤務経験もおありのようだった。そのクリニックのホームページの肛門周囲膿瘍のページを見てみると、基本は切るスタンスであると見受けられた。

初診料とかも含め、軽くはない負担だが、母に頭を下げ、月曜日にこのMMクリニックにかかった。

 

もう月曜になる頃には直立は不可になっていて、痛みを少しでもやわらげるべく、傘を杖代わりについて歩いた。

まだ22の身、特に恥などを感じはしなかったが、周りに奇異の目を少なからず向けられたし、惨めな気がして非常に辛かった。

が、それよりもその時の私には痛みから救われる事の方が大事だったし、救われると思えば惨めさもどこかへ吹き飛ばせた。

 

歩く速度を考慮して、普通だったら着く時間の30分後に予約を取ったが、5分程度しか遅れなかった。

問診票を書き、20分くらい待つことになるだろうな〜と思ったら2分とたたず呼ばれた。

予約した時間より前に来てしまったのに、早い。I肛門科は呼び出しまでで2.5時間取ったのを考えると異常に感じた。

 

診察室に入ると、ホームページの写真で見た穏やかな白髪の先生がいた。

病状を説明し、ここに来る前に肛門科で診てもらったこと、投薬で何とかしようとされたがまるで効果がなく2日寝れていないことなどを伝えると

「そうかそうか……苦しかったろう。多分座ると痛むだろうから立っていなさい。肛門科は私ではない医師が担当するけれど、これはおそらく切開になるね。痛いだろうけど、すぐ楽になるから」とおっしゃられた。

 

I肛門科で高圧的な診察を受けたからか、この先生からは仏のような神々しさすら感じたし、私の痛みに配慮して立っていることを許して頂いたという肛門科の専門医院ですらしてくれなかった気配りを見せられて、謝意を伝えるべく垂れた私の頭はなかなか上げられなかった。

 

別の診察室に誘導され、若い先生がいらっしゃった。

これから行うこととその手順、できるだけ痛くないようにするつもりだがどうしても痛むこと、患部の確認のために痛む箇所に触れる事があるがその時は事前に触ることを伝える、ということを伝えられた。

 

I肛門科の話ばかり出して恐縮だが、Iのところではいきなり「いれますよ〜」とか無しに肛門に手を突っ込まれたし、痛かったので、このような配慮にまた感動した。

 

そして、切開……

 

 

まず、坐薬を肛門に突っ込んだ。

最初の白髪のお爺さん先生が、若先生の私への手術を見に来ておられて、熱心に若先生に質問していたのだが、そのときの解説によると、この坐薬は手術自体の痛みというよりは、術後の傷の痛みを和らげる薬らしい。

 

次に尻の患部近くに麻酔(痛み止め?)を打つ。

事前情報ではこれがまず生きていて一番痛いと言われるレベルだったので、マジでビクビクしていた。

 

が、実のところそこまでの痛みではなかった。

本当に痛いのは確かだが、陥入爪の時の麻酔の方が500倍は痛い。親には家を出るときに「陣痛には及ばないかもわからないが、陣痛に限りなく近い痛みを感じてくる」とまで言ってきたのだが拍子抜けだった。

 

麻酔ののち切開なのだが、これもまた上のように事前情報では激痛とのことだった。麻酔なんか効いてないよこれ!みたいな痛み方をする、とかなんとか聞いていたのでビクビクしていたが、全然痛くない。

たまに麻酔の効果範囲スレスレだったのかスパッとした痛みが走る瞬間があったが、耐えられるレベルではあった。

 

なんだかんだであっさり切開手術は終了。

ガーゼをケツに挟まれ、テープで固定された。

診察室で待つよう言われたのでパンツとズボン履いて立ったのだが、その瞬間からもうすでに痛みが軽くなっているのを感じた。

えも言われぬ鈍く重い不快な痛みがなく、そこにあるのは切り傷的な痛みだった。

もう座れると思うよ、とのことだったが、座ると術後の切り傷が痛むのでさすがに少し浮かしていたが、本当に軽くなった。

このあとまた痔ろうなどについても考えなくてはいけないのだろうが、ひとまず平穏が訪れた。

 

みたび呼ばれた診察室では行ったことなどについて説明があり、水曜に消毒に来るよう言われた。

かくして私の肛門周囲膿瘍との格闘はひとまず平安期に入ったのだ。

 

 

やはり良い医者悪い医者というのは存在していて、同じことをされるにしても安心感やら何やらが全く違う。柔らかみがある方が安心できるし、終わった後の感謝の気持ちも全然変わってくる。

今回たまたまこうして良いお医者様に巡り会えたのは大変な幸運だったように思う。

 

いや〜それにしても疲れた。

今日はたくさん寝ます。JBCの予想を少ししてから寝ますかね……

 

もしここまで読んでくれた方がいらっしゃいましたらありがとうございました。

肛門周りで困ったことがあったら聞いてください。ある程度勉強をしたので力になれるかもわかりません。。。